Kokopelli

備忘録と思考と好きな事などをつらつらと。

狂四郎2030(漫画)

人間という生物が、その本能のまま、欲望のまま生きた社会が舞台。見るに耐えないシーンの連続。全20巻だが、一気読みは不可能に近い。この漫画の掲示板にも、途中に入るしょうもない下ネタやギャグがないと最後まで読めなかったという人が多数。それほど精神負荷の高い漫画と言える。

 

人間の脆さや愚かさに、何度も直面させられ、考えさせられる。この漫画の世界では国家によって国民が操作され、その国民はその独裁に反抗する力も、声を上げる感情すら残っていない。そこにあるのは理性を失い、飼い慣らされた、“人“という家畜でしかない。そんな人間達に、国家は仮想世界で生きるオプションを与えた。バーチャルマシンと呼ばれる、今の世界で言うVRといったところ。人々は、仮想世界で自分の欲望を発散し、現実世界では人としての生を捨てている。真の意味で生きているとは言えないのだ。

 

そんな世界において、理性を保った人間であろうとする主人公狂四郎とその妻志乃の、社会と自我との闘いが最大の見所である。

仮想世界と現実世界における自己の二面性に苦しむ二人。そして人間としての矜持を保つために、明らかに誤ったいきすぎた政治と壊れた世界と立ち向かっていくストーリーに心を掴み続けられる。

 

廻狂四郎「バベンスキー 時代は狂った方向に流れて行ってるんだよな」

バベンスキー「ああ。おれ達はそれに逆らって進んで行くのさ」

 

 

ディストピア漫画の傑作。読んでよかった。

 

 

狂四郎2030 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) https://www.amazon.co.jp/dp/B01GVGRPFE/ref=cm_sw_r_cp_api_i_HB8PDb2MRNAEW